日本で多い慢性頭痛は大きく3種類に分けられる。片頭痛、緊張型頭痛、そして群発頭痛だ。国立病院機構の資料によると、日本の有病率は片頭痛が8.3%、緊張型頭痛が22.4%。緊張型頭痛の方が患者数は多いが、日常生活への支障という点では片頭痛の方が深刻になりやすい。
片頭痛は20〜40代の女性に多く、片側性・拍動性の中等度から重度の痛みが特徴。吐き気や光・音過敏を伴い、動くと悪化する。一方の緊張型頭痛は、首や肩の筋肉の緊張が原因で起こる締め付けられるような痛み。デスクワークやストレス、姿勢の悪さが引き金になる。群発頭痛は男性に多く、目の奥をえぐられるような激痛が数週間から数ヶ月続く。
問題は、この3つが混同されやすいことだ。特に片頭痛と緊張型頭痛は併存することもあり、自己判断での対処には限界がある。さらに注意したいのが、薬物乱用頭痛。市販の鎮痛剤を月に10日以上使うと、かえって頭痛が慢性化するケースがある。頭痛の頻度が高い人ほど、薬に頼りすぎない視点が必要になる。
頭痛外来と頭痛専門医、どう探す?どう使う?
「頭痛くらいで病院に行っていいのか」と迷う人も多い。しかし日本頭痛学会は2005年から頭痛専門医認定制度を開始し、現在では全国に専門の外来が増えている。頭痛外来は、危険な二次性頭痛(くも膜下出血や脳腫瘍など)を見極めたうえで、慢性頭痛の診断と治療を専門的に行う場だ。
受診の目安は、頭痛で仕事や家事に支障が出ている、鎮痛剤を頻繁に使っている、これまで受けたことがないような激しい頭痛がある——といったケース。特に「突然始まった人生最悪の頭痛」「麻痺やしびれを伴う頭痛」は救急受診の対象になる。一方、慢性的なつらさは脳神経内科や頭痛外来で相談できる。日本頭痛学会のホームページでは、全国の頭痛専門医を検索できるので、最寄りの医療機関を探すのが確実だ。
診察では問診が中心になる。ここで役立つのが頭痛ダイアリー。発作の日時、痛みの強さ、持続時間、随伴症状、服用した薬と効果を記録しておくと、診断の精度が格段に上がる。紙のノートでもスマホアプリでも構わない。最低でも1ヶ月分の記録を持参すると、医師との会話がスムーズに進む。
片頭痛治療の選択肢
片頭痛の治療は急性期治療と予防療法の2本立て。発作時にはアセトアミノフェンやNSAIDs、トリプタン製剤を使う。2022年には新しくラスミジタンも登場し、選択肢が広がった。
発作の頻度が月に2回以上、あるいは生活への支障が強い場合は予防療法が検討される。ロメリジンやプロプラノロールといった従来型の薬に加え、近年注目されているのがCGRP関連抗体薬の注射治療だ。月1回または数ヶ月に1回の注射で発作の頻度と強度を減らす。片頭痛の予防に特化した治療として、日本でも広く行われている。薬物治療だけでなく、首・肩の緊張を和らげるリハビリや姿勢指導を組み合わせる医療機関も増えてきた。
治療法の比較、知っておきたい選択肢
| 治療の種類 | 特徴 | 費用感 | こんな人に向く | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛剤 | ドラッグストアで購入可能 | 手頃 | 頻度が低い人 | 手軽に始められる | 使い過ぎで薬物乱用頭痛のリスク |
| 処方薬(トリプタン系など) | 頭痛外来で処方 | 保険適用 | 片頭痛の発作が強い人 | 発作を速やかに抑える | 受診が必要、医師の指示に従う |
| CGRP関連抗体薬 | 月1回〜数ヶ月に1回の注射 | 保険適用の範囲内(適応による) | 慢性片頭痛で頻度が多い人 | 発作の頻度・強度を下げる | 適応の判断は専門医に相談 |
| 漢方・鍼灸・整体 | 医療機関や民間療法 | 施術内容により異なる | 薬を避けたい人 | 体質に合わせたアプローチ | 効果には個人差がある |
| 生活習慣の見直し | 睡眠・食事・運動の調整 | ほぼ費用なし | 全タイプの人 | 根本的な予防につながる | 継続が必要 |
自分でできること、今日から始める4つの習慣
片頭痛の誘因は人それぞれだが、共通して多いのは睡眠の乱れ、気圧・気温の変化、空腹、ストレス、アルコール、特定の食品だ。以下は多くの頭痛外来が勧める基本的な対策になる。
- 睡眠を規則正しく——寝不足も寝過ぎも片頭痛の大きな誘因。休日も平日も同じ時間に起きるのが理想。
- 光と音の調整——敏感な人はサングラスや照明の調整を。強い日差しや人混みの騒音は頭痛を悪化させる。
- 軽い運動を習慣に——激しい運動は逆効果だが、ストレッチや散歩、ラジオ体操程度なら血流が改善する。
- 頭痛ダイアリーを始める——自分の誘因が見えてくる。記録は受診時にも役立つ。
気圧の変化に敏感な人は、天気アプリで気圧情報をチェックし、調子が悪そうな日は無理をしないのも一つの手。月経周期と関連する片頭痛を持つ女性は、婦人科と連携した予防治療が有効な場合もある。
我慢はもうやめよう、専門家に相談するタイミング
「頭痛は日常の一部」と思い込んで何年も過ごしてきた人ほど、適切な治療を受けたときの変化は大きい。30代の会社員・佐藤さん(仮名)は、10年以上片頭痛に悩み、月に半分は薬を飲んでいた。頭痛外来で予防療法を始めたところ、発作の頻度が減り、市販薬への依存からも解放されたという。彼女の言葉を借りれば、「もっと早く受診すればよかった」のだ。
頭痛外来への受診は、初診でもそれほどハードルは高くない。脳神経内科や頭痛外来を標榜するクリニックは全国に広がっている。まずはお住まいの地域で「頭痛外来」や「脳神経内科」を検索し、近くの医療機関に問い合わせてみよう。日本頭痛学会の専門医リストも参考になる。
頭痛は我慢するものではない。つらさを抱え込むより、一度きちんと診断を受けて、自分に合った対策を見つけることが、長い目で見れば一番の近道だ。今日の頭痛が、来月の頭痛にならないように。その一歩を、頭痛ダイアリーを開くことから始めてみてほしい。