日本は世界でも有数の頭痛多発国と言われる。その理由のひとつが気圧の変化だ。秋雨前線や台風の接近時に気圧が急降下すると、頭痛を訴える人が増える。日本気象協会の天気痛情報でも、気圧の低下する地域では頭痛や首・肩のこり、めまいに注意を呼びかけている。雨の日の前日にズキズキと痛む、という経験がある人も多いのではないだろうか。
もうひとつの大きな要因が、長時間のデスクワークとスマホの使いすぎによる首・肩のこりだ。日本のオフィスワーカーの多くは、一日中同じ姿勢で画面を見続けている。その結果、後頭部から首にかけて締め付けられるような痛みを抱える人が増えている。
頭痛には大きく分けて、原因となる病気がない「一次性頭痛」と、脳出血や脳腫瘍などの病気が原因の「二次性頭痛」がある。二次性頭痛は命に関わることもあるため、突然の激しい痛みや、これまでに経験したことのない頭痛は、迷わず医療機関を受診してほしい。
一次性頭痛の代表格は以下の3種類だ。
- 片頭痛――頭の片側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音への過敏を伴う。痛みは4〜72時間続くことがある。
- 緊張型頭痛――頭全体がギューッと締め付けられるような痛み。首や肩のこりが原因になることが多い。
- 群発頭痛――目の奥がえぐられるような激しい痛みが、数週間から数か月にわたって毎日決まった時間に起こる。男性に多い。
種類別にみる、頭痛への正しい向き合い方
片頭痛は「冷やす」、緊張型頭痛は「温める」
対処の基本は、片頭痛なら痛む側のこめかみを冷やす、緊張型頭痛なら首や肩を温める、という使い分けだ。片頭痛の発作中は光や音を避けて静かな部屋で休むのがよい。一方、緊張型頭痛には38〜40度のぬるめのお湯に首まで10〜15分つかる入浴が効果的とされる。耳回しや首・肩のストレッチもこまめに行いたい。
市販薬の使いすぎは頭痛を悪化させる
ここで注意したいのが「鎮痛薬の使いすぎによる頭痛」だ。頭痛を持つ人の約75%が市販薬で自己対応しているという報告もあるが、鎮痛薬を月に15日以上、トリプタン製剤を月に10日以上使うと、かえって頭痛が慢性化しやすい。薬が切れると痛みが出て、また薬を飲む……という悪循環に陥ると、専門的な治療が必要になるケースもある。
目安として、以下のような状況が当てはまるなら、頭痛外来の受診を検討してほしい。
- 痛み止めが効きにくくなってきた
- 寝込んでしまい、学校や仕事を休むことがある
- 週に2回以上、痛み止めが必要
- 市販薬の使用量が増えている
頭痛ダイアリーで自分の「誘因」を特定する
頭痛の原因を探るうえで有効なのが頭痛ダイアリーだ。痛みが出た日時、場所、強さ、その日の睡眠時間、食事、天気、ストレスなどを記録していくと、自分の頭痛の誘因が見えてくる。赤ワインやチョコレート、熟成チーズといった食べ物がきっかけになる人もいれば、寝不足や月経周期、気圧の変化が引き金になる人もいる。誘因は人それぞれなので、自己観察が何より大切だ。
頭痛外来と治療の選択肢を知る
頭痛の頻度が高く、日常生活への影響が大きい場合は、頭痛外来の受診がおすすめだ。日本には日本頭痛学会が認定する頭痛専門医が各地に在籍し、頭痛外来を開設するクリニックも増えている。初診では問診票への記入と、必要に応じてMRI検査を行い、頭痛の種類を診断する。二次性頭痛を除外して安心して治療を始められるのが大きなメリットだ。
最近では、片頭痛の仕組みに直接働きかける新しい治療薬も登場している。2025年には、片頭痛の急性期治療と発症抑制の両方に使える経口薬が国内で発売され、注目を集めた。予防薬としては、CGRP関連抗体薬の注射剤や、日本で古くから使われる予防薬の選択肢もある。薬だけでなく、認知行動療法や生活指導を組み合わせるクリニックも多い。
治療法の比較を、表にまとめた。
| 治療の種類 | 主な内容 | 費用の目安 | こんな人に向く | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販薬での対症療法 | 鎮痛薬を都度服用 | 比較的手頃 | 月に数回程度の軽い頭痛 | 手軽に始められる | 使いすぎると頭痛を悪化させる |
| 頭痛外来での診断・処方 | 専門医による診察とトリプタン製剤などの処方 | 保険診療の自己負担 | 週に数回、痛みが強い人 | 原因を正確に診断してもらえる | 通院の手間が必要 |
| 予防療法 | 毎日服用する予防薬やCGRP関連抗体薬の注射 | 保険診療の自己負担(薬剤により異なる) | 頭痛の頻度が高く生活に支障がある人 | 発作そのものを減らせる | 効果が出るまで数週間かかる |
| 非薬物療法 | 鍼灸、整体、リラクゼーション、認知行動療法 | 施術内容により異なる | 薬を減らしたい人、こりが強い人 | 体への負担が少ない | 保険適用外の施術もある |
| 費用については、保険診療であれば自己負担は一定の範囲内に収まるが、自由診療となる鍼灸や整体、一部の検査は施術内容によって費用が異なるため、事前に確認してほしい。いずれにせよ、まずはかかりつけ医か頭痛外来に相談し、自分に合う治療方針を決めるのが近道だ。 | | | | | |
今日から始められる4つの習慣
最後に、頭痛の予防に役立つ日常の習慣を紹介する。特別な道具は必要ない。
- 睡眠時間を一定に保つ。休日に寝だめするより、毎日の就寝・起床時間を揃える方が頭痛予防には効果的だ。週末に頭痛が起きやすい人は、睡眠リズムの乱れが原因かもしれない。
- 首と肩を毎日ほぐす。入浴時に首の後ろを温め、耳回しや肩甲骨周りのストレッチを取り入れる。デスクワークの合間に1時間おきの休憩を習慣づけるのもよい。
- 天気痛対策を身につける。気圧の下がりやすい日の前日から、耳や首を温め、ぬるめの湯船にゆっくり浸かる。天気痛の予報をチェックするのも手だ。
- 頭痛ダイアリーを続ける。スマホのメモ帳やアプリで構わない。痛みの記録は、医療機関を受診する際にも役立つ。
頭痛は我慢するものではない。正しい知識を持ち、適切な対処と治療を選べば、生活の質は大きく改善する。痛み止めに頼りすぎていると感じたら、一度専門医の門をたたいてみてほしい。頭痛のない毎日は、想像以上にすぐそこにある。
参考情報: 頭痛外来の受診を検討する際は、日本頭痛学会の認定専門医が在籍する医療機関や、お住まいの地域の脳神経内科・脳神経外科クリニックを探すとよい。頭痛の種類によって適切な診療科が異なるため、まずは気軽に相談できる医療機関に問い合わせてみよう。