頭痛といっても、その正体は人それぞれです。まずは自分がどのタイプに当てはまるのかを知ることから始まります。日本頭痛学会の診療ガイドラインでは、一次性頭痛(いわゆる「いつもの頭痛」)を大きく3つに分類しています。
片頭痛は、20〜40代の女性に多く、頭の片側がズキンズキンと脈打つように痛むのが特徴です。吐き気や嘔吐、光や音がまぶしく感じるといった症状を伴い、動くと痛みが悪化します。日本の成人の約8.4%が片頭痛を経験しており、女性は男性の約3倍というデータもあります。
緊張型頭痛は、日本で最も多いタイプで、有病率は約22.4%とされています。頭全体がギューッと締め付けられるような鈍い痛みが特徴で、肩こりや目の疲れ、ストレスが引き金になります。デスクワーク中心の生活を送っている人に多く見られます。
群発頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛に比べると患者数は少ないものの、片側の目の奥がえぐられるような激痛が数週間から数ヶ月にわたって毎日のように起こります。20〜40代の男性に多いという特徴があります。
ここで注意したいのが、頭痛のタイプによって適切な対処法がまったく異なるという点です。片頭痛には冷やすのが効果的ですが、筋肉の緊張が原因の緊張型頭痛では、首や肩を温めるほうが良い場合もあります。「いつもの頭痛」と決めつけず、まずは自分の頭痛の特徴を観察してみてください。
市販薬との付き合い方――使いすぎが頭痛を招く
頭痛が起こると、多くの人が市販の鎮痛薬に頼るでしょう。ドラッグストアにはロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェン、アセトアミノフェンなど、さまざまな成分の薬が並んでいます。これらは軽度から中等度の頭痛には有効ですが、注意すべき落とし穴があります。
**薬の使いすぎによる頭痛(薬物乱用頭痛)**です。市販薬や処方薬を月に10日以上、あるいは週に2〜3日以上の頻度で使っていると、かえって頭痛が起こりやすくなることが知られています。鎮痛薬が切れると痛みがぶり返し、また薬を飲む……という悪循環に陥るのです。
「市販薬が効かなくなってきた」「使う回数が増えてきた」という自覚がある人は、注意が必要です。薬物乱用頭痛からの回復には、原因となっている薬剤をいったん中止し、頭痛のタイプに合った予防薬を使う専門的な治療が欠かせません。自己判断で薬を増やすのではなく、頭痛専門医に相談することをおすすめします。
| 頭痛タイプ | 主な特徴 | 市販薬での対応 | 専門医の対応例 |
|---|
| 片頭痛 | 片側性・拍動性の痛み、吐き気、光・音過敏 | アセトアミノフェン、NSAIDs(軽度〜中等度の場合) | トリプタン製剤、CGRP関連薬、予防療法 |
| 緊張型頭痛 | 両側性・締め付けられる鈍い痛み、肩こり | NSAIDs、漢方薬(葛根湯など) | 理学療法、鍼灸、神経ブロック |
| 群発頭痛 | 片側の目の奥の激痛、涙・鼻水を伴う | 市販薬では対処が難しい | トリプタン注射、酸素吸入、専門医での治療 |
片頭痛の最新治療――選択肢は広がっている
片頭痛の治療は近年、大きく進歩しています。従来は発作が起きてから痛みを和らげる「急性期治療」が中心でしたが、今は発作そのものを予防する「予防療法」が注目されています。
急性期治療では、軽度〜中等度の頭痛にはアセトアミノフェンやNSAIDsが、中等度〜重度の頭痛にはトリプタン製剤が推奨されます。2022年には新たにラスミジタンという薬も登場し、2025年には日本初となる急性期治療と発症抑制の両方に使える経口CGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠」も発売されました。CGRPは片頭痛の発作中に血中で増加する神経伝達物質で、その働きを抑えることで痛みや随伴症状を軽減できると考えられています。
予防療法としては、従来のβ遮断薬や抗てんかん薬に加えて、月1回または数ヶ月に1回の注射で効果が持続するCGRP関連抗体薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなど)が広く使われるようになっています。ただし、これらの新しい薬は日本頭痛学会などの専門医でなければ処方できないため、頭痛外来や脳神経内科の受診が必要です。
「頭痛が月に2回以上ある」「頭痛のために仕事や家事に支障が出ている」という人は、予防療法の対象になる可能性があります。頭痛を我慢する時代は終わりました。適切な治療を受ければ、発作の頻度を減らし、日常生活の質を取り戻すことは十分に可能です。
頭痛外来を受診するタイミング
「このくらいの頭痛なら病院に行くほどではない」と思っている人は多いですが、以下のようなサインがある場合は早めに受診を検討してください。
- 突然、今まで経験したことがない激しい頭痛が起きた
- 頭痛の痛み方や頻度が以前と変わってきた
- 市販薬が効かなくなってきた、使う回数が増えている
- 頭痛とともに吐き気、めまい、手足のしびれを伴う
- ものが二重に見える、視野が欠ける
- 発熱や首の硬さを伴う
特に、突然の激しい頭痛や、意識がぼんやりする、片側の手足に力が入らない、ろれつが回らないといった症状がある場合は、脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があります。迷わず救急要請を含めて早急に対応してください。
頭痛外来は、日本頭痛学会のホームページで専門医がいる医療機関を調べられます。脳神経内科や脳神経外科が対応していることが多く、必要に応じてMRIやCT検査を行い、危険な頭痛ではないかを確認した上で、一人ひとりの頭痛のタイプに合った治療を提案してくれます。
毎日の生活でできる頭痛対策
薬だけに頼らない頭痛管理も大切です。頭痛の頻度を減らすためには、生活習慣の見直しが効果的です。
睡眠は頭痛と深く関係します。寝すぎも寝不足も頭痛の引き金になるため、毎日同じ時間に起床し、規則正しい睡眠リズムを保つことが重要です。食事では、空腹を避け、アルコールやカフェインの摂りすぎに注意しましょう。運動は、適度な有酸素運動が血流を改善し、ストレスを軽減する効果が期待できます。
また、女性の場合は、生理前後のホルモンバランスの変化が片頭痛の引き金になることがあります。月経周期と頭痛の関係を頭痛ダイアリーに記録しておくと、受診時に医師へ伝えやすくなります。頭痛ダイアリーは、日本頭痛学会のウェブサイトからもダウンロードできます。
まとめ――頭痛は「我慢するもの」ではなく「治療するもの」
日本人の多くが経験する頭痛ですが、適切な治療を受けている人はまだまだ少ないのが現状です。片頭痛だけでも国内で年間数千億円規模の経済的損失が生じているという推計もあり、頭痛を放置することは個人のQOLだけでなく、社会全体にとっても大きな損失といえるでしょう。
「ただの頭痛」と軽視せず、自分の頭痛のタイプを知り、必要に応じて専門医の治療を受けること。市販薬に頼りすぎず、予防的な視点で頭痛と向き合うこと。この2つが、つらい頭痛から解放されるための近道です。頭痛に悩むなら、まずは一度、頭痛外来の扉を叩いてみてはいかがでしょうか。