頭痛には「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。一次性は病気が原因ではない頭痛で、片頭痛と緊張型頭痛が代表的。二次性は脳出血や髄膜炎など、何らかの病気が原因で起こる頭痛です。ここでは、日常生活で最も遭遇しやすい2つの一次性頭痛に注目します。
片頭痛は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛むのが特徴です。痛みは中等度から重度で、4〜72時間続きます。吐き気や嘔吐を伴い、光や音、においに敏感になるのも典型的な症状。日本の有病率は成人の約8.4%で、女性は男性の約3倍、特に20代から40代の女性に多く見られます。生理前後に悪化する人も少なくありません。
一方、緊張型頭痛は頭全体が締め付けられるように痛むのが特徴です。肩や首のこり、長時間のデスクワーク、精神的なストレスがきっかけになります。片頭痛と違って吐き気はあまりなく、動いても痛みは強くなりにくい。こちらは男女差が小さく、働き盛りの層に広く見られます。
この2つを混同してしまうと、対処法もずれてきます。片頭痛は静かな暗い部屋で休むのが有効ですが、緊張型頭痛は軽いストレッチや温めが効果的です。まずは自分の頭痛がどのタイプかを観察することから始めましょう。頭痛の頻度、痛む場所、持続時間、伴う症状をメモしておくと、受診の際にも役立ちます。
市販薬と処方薬の使い分け——我慢する前に知っておきたいこと
頭痛が起こると、まずドラッグストアで買った市販薬を飲む人が多いでしょう。市販の鎮痛薬にはイブプロフェンやアセトアミノフェンなどがあり、緊張型頭痛にはよく効きます。片頭痛の軽い発作にも一定の効果が期待できます。
ただし、市販薬の服用が月に10日を超えると「薬剤使用過多による頭痛」を引き起こすリスクがあります。鎮痛薬が切れるとまた痛みがぶり返し、ますます薬に頼る悪循環に陥るのです。薬を飲む頻度が増えてきたと感じたら、それは医療機関を受診するサインです。
処方薬の世界はここ数年で大きく変わりました。トリプタン系薬剤は片頭痛発作の急性期治療の中心ですが、2025年には日本で初めて、急性期治療と発症抑制の両方に使える経口CGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)が発売されています。さらに、予防療法としてCGRP関連の注射薬も登場し、「頭痛は我慢するもの」という常識は変わりつつあります。
| 種類 | 代表的な選択肢 | 特徴 | こんな人に向く |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | イブプロフェン、アセトアミノフェン | 手軽で安価、緊張型頭痛に有効 | 月数回程度の軽い頭痛 |
| トリプタン系処方薬 | スマトリプタンなど | 片頭痛の急性期に特化、吐き気にも効果 | 月に数回、強い片頭痛発作がある人 |
| 経口CGRP受容体拮抗薬 | リメゲパントなど | 急性期と発症抑制の両方に対応 | トリプタンが効きにくい人、薬の種類を減らしたい人 |
| CGRP関連予防注射 | ガルカネズマブなど | 月1回の注射で発作を予防 | 月に4回以上発作がある慢性の人 |
| 筋弛緩薬 | チザニジン、エペリゾン | 肩こりを伴う緊張型頭痛に併用 | 首肩のこりが強い人 |
天気痛に負けない——気圧変化と上手に付き合う方法
日本に住む頭痛持ちが避けて通れないのが、気圧の変化です。特に梅雨や秋雨前線が近づく時期は、頭痛を訴える人が急増します。日本気象協会の気圧予報では、関東から北海道にかけて気圧が大きく下降する日には影響度「大」とされ、頭痛やめまい、首や肩のこりに注意が呼びかけられています。
気圧の変化で症状が出やすい人は、天気予報の気圧情報を習慣的にチェックしましょう。気圧が下がりそうな日は、あらかじめ次のような対策をしておくと症状が軽くなります。
- 耳まわりのマッサージ——耳を回したり、耳たぶを軽く引っ張ったりするだけでも内耳の血流が促されます
- 首と肩のストレッチ——デスクワークの合間にこまめに動かす
- 38〜40度のぬるめのお湯に10〜15分首までつかる入浴——気温差と気圧差の両方に効果的
- 規則正しい生活——睡眠不足と飲みすぎは気圧変化への感受性を高めます
気圧が下がる日は予定を詰め込みすぎない、というのも現実的な対策です。無理をして発作を誘発するよりも、天気の悪い日は体を休める日だと割り切るほうが、長い目で見れば仕事の効率も上がります。
危険な頭痛のサイン——迷ったら受診を
ここまで一次性頭痛の話をしてきましたが、頭痛の中には命に関わるものもあります。次のような症状があれば、ためらわずに医療機関を受診してください。
- 今まで経験したことのない突然の激痛(雷鳴頭痛)
- 発熱と首のこわばりを伴う頭痛
- 片方の手足のまひやしびれ、言葉がうまく出ない
- 意識がもうろうとする
- 進行性に悪化する頭痛
- がんや脳卒中の既往がある人が新たに起こした頭痛
こうした「危険な頭痛」に心当たりがない場合でも、月に4回以上発作がある、市販薬の使用頻度が上がっている、仕事や家事に支障が出ているという人は、一度脳神経内科や頭痛外来を受診しましょう。日本全国の主要都市には頭痛外来を標榜するクリニックが増えており、頭痛専門医による診察と治療計画の立案を受けることができます。
受診の際は、頭痛ダイアリーを持参すると診断がスムーズです。いつ、どのくらいの痛みで、何をすると楽になるか。2週間から1ヶ月記録すれば、医師も適切な治療を提案しやすくなります。
頭痛は我慢するものではありません。正しい知識を持ち、適切な治療を選ぶことで、発作のない日々を増やせる時代になっています。まずは自分の頭痛のタイプを見極め、市販薬に頼りすぎず、必要なら専門医の力を借りてみてください。天気の悪い日は無理をせず、気圧予報を味方につける。それだけでも、頭痛との付き合い方は確実に楽になります。