日本頭痛学会のガイドラインによると、緊張型頭痛は日本人の約22%が経験しており、片頭痛は約8.4%と報告されています。人数に換算すると2000万人以上が緊張型頭痛、約840万人が片頭痛に悩んでいる計算です。片頭痛に限れば20代から40代の女性に特に多く、30代女性では約17%、40代女性では約18%という調査結果もあります。
それにもかかわらず、医療機関を受診する人はごく一部にとどまります。「痛みを我慢するのが美徳」という風土が根強い日本では、頭痛を病気として扱わない傾向が色濃く残っています。電車通勤での肩こり、長時間のデスクワーク、梅雨や台風シーズンの気圧変動。日本の生活環境そのものが、頭痛を引き起こしやすい条件をそろえているとも言えるでしょう。
片頭痛と緊張型頭痛、対処は正反対
頭痛とひと口に言っても、タイプによって対処法が異なります。場合によっては正反対になるため、見分け方が重要です。
片頭痛の特徴は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛むこと。吐き気や嘔吐を伴い、光や音、においに過敏になります。痛みは4時間から72時間続き、発作の前には目の前がチカチカする前兆を感じる人もいます。
一方、緊張型頭痛は頭全体がハチマキやヘルメットで締め付けられるような鈍い痛みです。肩こりや首のこり、目の疲れを伴いやすく、午後から夕方、パソコン作業の後に悪化する傾向があります。体を動かしても悪化せず、むしろ入浴や軽い運動で楽になるのが特徴です。
見分け方が大切なのは、片頭痛には安静と暗い部屋が、緊張型頭痛には適度な血流改善が有効だからです。逆の対処をすると悪化することもあります。「市販薬が効かない」と感じる人の多くは、自分の頭痛タイプに合わない薬を使っているケースが少なくありません。
治療の選択肢と特徴
最近の頭痛治療は大きく進歩しています。特に片頭痛の分野では、新たな治療薬が登場し、選択肢が広がっています。
| 治療カテゴリ | 代表的な選択肢 | 特徴 | 向いている人 | 注意点 |
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| 市販の鎮痛薬 | ロキソニンS、イブ、カロナールなど | ドラッグストアで手軽に購入でき、経済的 | 月に数回程度の軽い頭痛 | 月15日以上の使用は薬物乱用頭痛のリスク |
| トリプタン系処方薬 | スマトリプタン、ゾルミトリプタンなど | 片頭痛発作に特化し、保険診療で処方可能 | 片頭痛と診断された方 | 月10日以上の使用は乱用につながる |
| 経口CGRP拮抗薬 | ナルティークOD錠(リメゲパント) | 発作時の頓服と予防の両方に対応する新しい経口薬 | 従来の薬が効きにくい方 | 頭痛専門医の処方が必要 |
| CGRP抗体予防注射 | エムガルティ、アジョビなど | 月1回の自己注射で発作そのものを減らす | 月に数回以上発作がある方 | 継続的な通院が必要 |
| 非薬物療法 | 頭痛ダイアリー、生活指導、理学療法 | 薬に頼らず原因にアプローチ | 全ての頭痛もちの方 | 習慣化に時間がかかる |
| 費用について気になる方もいるでしょう。処方薬や注射はいずれも保険診療の範囲で受診できるため、自己負担は診療内容に応じて変わります。市販薬と比べると初期費用はかかりますが、薬の効き目が悪く何年もやり過ごすより、結果的に経済的なケースが多いと専門医は指摘します。 | | | | |
市販薬に頼りすぎると頭痛が慢性化する
「痛くなったら市販薬を飲む」を繰り返していると、注意が必要です。頭痛薬を頻繁に使うと、かえって頭痛が慢性化する薬物乱用頭痛(MOH)に陥ることがあります。
市販薬は月15日以上、トリプタン系の処方薬は月10日以上の使用でリスクが高まるとされています。一時的に痛みが治まっても、効果が切れると再び頭痛がぶり返し、薬の量が増えていく悪循環に陥るのがMOHの特徴です。
都内のIT企業で働く30代のAさんも、その一人でした。「毎日のように痛み止めを飲んでいて、気づけば市販薬では効かなくなっていた」と言います。頭痛外来で薬物乱用頭痛と診断され、薬の使用を整理しながら片頭痛の治療を再スタート。現在は発作の頻度が月に数回まで減り、薬を使わずに過ごせる日が増えたそうです。
市販薬を使った日はカレンダーやスマホに記録する習慣をつけましょう。月に10回を超えたら、頭痛外来の受診を考える目安です。
受診の目安と地域の医療リソース
以下のような項目に一つでも当てはまる場合は、頭痛専門医への相談をおすすめします。
- 月に2回以上頭痛があり、予定を崩すことがある
- 市販薬が効かない、効く量が増えてきた
- 痛み止めを月10日以上使っている
- 初めて経験する強い頭痛で不安がある
- 天気や気圧、寝不足、ストレスで悪化しやすい
逆に、突然の激しい頭痛、手足のしびれ、言葉が出にくいといった症状がある場合は、迷わず救急車を呼ぶか、すぐに脳神経外科を受診してください。くも膜下出血など命に関わる疾患の可能性があります。
頭痛外来は全国に広がっています。東京では赤坂おかだ頭痛クリニックのように脳神経外科を背景に片頭痛・慢性頭痛・群発頭痛を専門に診る施設が、大阪では土日や平日夜まで診療する大阪頭痛脳神経クリニックのような選択肢もあります。日本頭痛学会のホームページでは、頭痛専門医を地域から探すことも可能です。
今日から始めるアクション
いきなり専門医を探す前に、できることがあります。頭痛ダイアリーをつけてみてください。痛む日時、場所、強さ、天気、睡眠時間、食事、女性なら生理周期まで記録すると、自分の頭痛のトリガーが見えてきます。この記録は受診時の診断にも役立ちます。
市販薬の使用回数も同じように可視化しておきたいところです。飲んだ日をカレンダーに印をつけるだけでも、乱用への意識が変わります。
気圧や天気に反応しやすい人は、天気予報アプリの頭痛予報機能を活用してみてください。悪化しやすい日が分かれば、前日から睡眠と水分を意識的に確保し、発作を予防できます。
頭痛は我慢するものではありません。適切な治療でコントロールできる病気です。市販薬に頼る日々が続いているなら、一度、お近くの頭痛外来を訪ねてみてはいかがでしょうか。あなたの「頭痛がない日」を増やす治療が、きっと見つかります。