頭痛と一口に言っても、その原因や性質は人によってまったく異なる。日本頭痛学会の診療ガイドラインでは、一次性頭痛として片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つを主要なタイプとして挙げている。自分がどのタイプに当てはまるかを知ることが、適切な対処への第一歩になる。
片頭痛は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音・においへの過敏を伴うことが特徴だ。痛みは4時間から72時間続くことがあり、発作の前に視覚の異常(閃輝暗点)が現れる人もいる。緊張型頭痛は、頭全体がギューッと締め付けられるような鈍い痛みで、肩こりや眼精疲労がきっかけになることが多い。群発頭痛は片側の目の奥がえぐられるような激痛が数週間から数ヶ月にわたって毎日のように起こり、男性に多く見られる。
特に注意したいのは、毎日のように頭痛薬を飲んでいるケースだ。鎮痛薬の使い過ぎがかえって頭痛を慢性化させる「薬物乱用頭痛」は、日本でも増加傾向にある。月に10日以上、頭痛のために鎮痛薬を服用している場合は、自己判断での服用を続けずに医師へ相談してほしい。
医療機関を受診すべきサイン
- 今までに経験したことのないような突然の激しい頭痛
- 頭痛とともに発熱、意識障害、手足のまひ、言葉のもつれがある
- 頭痛が数日間続き、徐々に悪化している
- 50歳を過ぎてから初めて頭痛を経験した
これらのいずれかに当てはまる場合は、くも膜下出血や脳腫瘍などの二次性頭痛の可能性があるため、速やかに脳神経外科や救急外来を受診してほしい。
頭痛外来でできること 問診と頭痛ダイアリーから始まる診断
「頭痛くらいで病院に行くのは恥ずかしい」と感じる人もいるかもしれない。しかし、日本では現在、全国の大学病院や地域の中核病院に頭痛専門外来が設置されており、日本頭痛学会が認定する頭痛専門医も各地に存在する。
頭痛外来では、まず問診によって痛みの性質、頻度、持続時間、随伴症状、服用中の薬、生活習慣などを詳しく聞かれる。診断をスムーズにするためには、頭痛ダイアリーをつけておくと良い。発作の日時、痛みの強さ、場所、その日の天気や睡眠時間、食事内容などを記録しておくことで、頭痛のパターンや誘因が明確になり、診断の精度も上がる。日本頭痛学会のウェブサイトから無料のダイアリー用紙をダウンロードすることもできる。
必要に応じてMRIやCTなどの画像検査が行われることもあるが、片頭痛や緊張型頭痛の多くは画像検査で異常が見つからない。むしろ、問診とダイアリーの情報が診断の中心になることが多い。
片頭痛の治療選択肢
治療は主に、発作が起きたときに対処する急性期治療と、発作を予防する予防療法の2本柱で進められる。
急性期治療では、市販薬で効果が不十分な場合、トリプタン製剤やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などが処方される。最近では、CGRP関連の新しい経口薬も登場している。2025年には、急性期治療と発症抑制の両方の適応を持つ経口CGRP受容体拮抗薬が国内で発売され、従来の治療で効果が不十分だった人にも新たな選択肢が加わった。
予防療法は、月に4回以上の発作がある場合や、発作による生活への支障が大きい場合に検討される。内服薬に加えて、近年はCGRP関連の注射薬や、神経刺激を用いた治療機器も使われるようになっている。
「痛くなったら薬を飲む」だけではなく、「発作そのものを減らす」という視点を持つことが、慢性化を防ぐ鍵になる。
日常でできる頭痛対策 生活習慣の見直しで発作を減らす
薬だけに頼らず、日常生活の工夫によって頭痛の頻度や強さを抑えられることも多い。
睡眠のリズムを整えることは、片頭痛予防の基本だ。週末に寝だめをすると、かえって頭痛を誘発することがある。平日と休日で起床時間に大きな差をつけないように心がけよう。
食事との関係も無視できない。空腹、カフェインの過剰摂取、チーズやチョコレート、加工肉などの食品が誘因になる人もいる。自分がどの食品に反応するかを頭痛ダイアリーで把握しておくと、予防に役立つ。
デスクワーク中の姿勢も重要だ。長時間のパソコン作業で首や肩の筋肉が緊張すると、緊張型頭痛につながる。1時間に1回は立ち上がってストレッチをし、肩甲骨を動かすことを習慣にしたい。日本頭痛学会が紹介する「頭痛体操」も、手軽にできるセルフケアとして知られている。
気圧の変化に敏感な人も多い。日本では春先や梅雨時、台風シーズンに頭痛が悪化するという「気象病」の訴えがよく聞かれる。気圧の変化を予測するスマートフォンのアプリを活用し、下がりそうな日は無理な予定を入れないなどの工夫も有効だ。
頭痛の悩みを一人で抱えない 専門医とパートナーシップを
頭痛は命に関わらないことが多い一方で、放置すると仕事や家事、人間関係にまで影響を及ぼす。特に女性の場合、月経周期に合わせて頭痛が起こる「月経関連片頭痛」に悩む人もおり、ホルモンバランスと向き合いながら治療を続ける必要がある。
近年、日本でも頭痛に対する社会的な理解は少しずつ広がっている。企業の健康経営の一環として、頭痛を持つ従業員のための制度を整える動きも見られる。頭痛で休みたいのに休めない、と我慢し続けるより、「片頭痛は治療できる病気である」という認識を持ち、かかりつけ医や頭痛専門医に相談することが、結果的に長く健康で働き続ける近道になる。
まずは自分に合った病院を探すところから始めてみてほしい。日本頭痛学会のウェブサイトには、都道府県ごとの頭痛専門医リストが掲載されている。お住まいの地域で頭痛外来を探す際は、「頭痛外来 〇〇県」で検索するのが早い。
「たかが頭痛」と軽く見ずに、「されど頭痛」と向き合うこと。それが、つらい頭痛から解放されるための第一歩だ。