日本の成人の約4人に1人が慢性的な頭痛に悩んでいるとされ、とくに片頭痛は20〜40代の女性に多く見られます。それでも医療機関を受診せず、市販の鎮痛薬でやり過ごしている人が少なくありません。
頭痛外来の現場でよく出会うのは、「痛み止めを飲めば何とか仕事に行ける」という状態が何年も続いた末に、薬が効かなくなって来院するケースです。市販の鎮痛薬を月に10日以上飲み続けると、かえって頭痛が悪化する薬物乱用頭痛に陥る危険があります。
日本の職場では、頭痛を理由に休むことに後ろめたさを感じる人も多いでしょう。体調が悪いのに無理して出社し、集中力が落ちたまま仕事をしているという状態は、医学的に見ればれっきとした治療対象です。頭痛による生産性の低下は、本人の生活の質だけでなく職場全体にも影響を及ぼします。
頭痛のタイプを見極める
頭痛とひと口に言っても、タイプによって対処法がまったく異なります。代表的な一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つです。
3つの代表的な頭痛
片頭痛は、ズキズキと脈打つような痛みが数時間から数日続き、吐き気や光・音・においへの過敏を伴うのが特徴です。寝不足、月経前後、気圧の変化で悪化しやすく、20〜40代の女性に多く見られます。
緊張型頭痛は、頭全体をギューッと締め付けられるような鈍い痛みで、肩こりや首こり、眼精疲労とセットで起こることが多い。デスクワークが長い人やストレスの多い人に慢性的に見られます。
群発頭痛は、片側の目をえぐられるような激しい痛みが数週間から数か月の間、毎日のように繰り返す病気です。男性に多く、発作中はじっとしていられないほどの痛みを伴うため、自己判断で市販薬に頼るのではなく、早めに専門医の診察を受ける必要があります。
| タイプ | 痛みの特徴 | 主な随伴症状 | 好発する人 | 基本の対処 |
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| 片頭痛 | ズキズキと脈打つ | 吐き気、光・音過敏 | 20〜40代の女性 | トリプタン製剤、予防療法 |
| 緊張型頭痛 | 締め付けられる鈍痛 | 肩こり、眼精疲労 | デスクワーク、ストレスの多い人 | 姿勢改善、漢方、筋弛緩 |
| 群発頭痛 | 目をえぐられる激痛 | 涙、鼻水、目の充血 | 20〜40代の男性 | 専門医による急性期治療 |
| 片頭痛と緊張型頭痛は併存することも多く、自己判断で市販薬だけに頼っていると、適切な治療にたどり着けないことがあります。頭痛のタイプを正しく見分けるためにも、一度は医療機関で診断を受けることをおすすめします。 | | | | |
治療の選択肢は広がっている
近年、片頭痛治療は大きく進歩しました。発作が起きたときに飲む急性期治療薬に加え、発作そのものを減らす予防療法が充実し、CGRP関連抗体薬などの新しい治療薬も登場しています。これまで痛いときに飲む薬と予防する薬を別々に使う必要があったところ、両方に使える経口薬も日本で使えるようになりました。
| 治療アプローチ | 代表的な方法 | 費用の目安 | こんな人に | メリット | 注意点 |
|---|
| 急性期治療 | トリプタン製剤、NSAIDs | 保険診療で受けられる | 発作が起きたとき | 痛みを短時間で抑える | 使いすぎに注意 |
| 予防療法 | ロメリジン、抗てんかん薬など | 保険診療で受けられる | 月2回以上発作がある | 発作の頻度と強さを減らす | 効果が出るまで時間がかかる |
| CGRP関連抗体薬 | 注射または点滴 | 保険適用で受けられる | 従来の予防薬が効かない人 | 高い予防効果が期待できる | 専門外来での処方が必要 |
| 新世代の経口薬 | リメゲパントなど | 保険診療で受けられる | 急性期と予防の両方に使いたい人 | 1剤で両方の役割を担える | 国内では登場したばかり |
| 大阪市内の頭痛センターでは、片頭痛と緊張型頭痛が併存していた40代の女性が、医師の指導のもと予防療法を始めたところ、3か月ほどで発作の頻度を半分以下に減らせた例があります。きっかけは、自己流で飲んでいた市販薬をやめ、頭痛ダイアリーを持って専門外来を受診したことでした。 | | | | | |
| 東京都内の頭痛クリニックに通う30代の会社員Sさんは、以前は痛み止めを飲んで何とか出社する日々を送っていました。トリプタン製剤と予防薬を組み合わせた治療に切り替えてからは、頭痛のことを忘れて仕事に集中できる時間が確実に増えたといいます。 | | | | | |
| こうしたケースに共通するのは、市販薬中心の自己流ケアから、診断に基づく治療へと切り替えた点です。頭痛のタイプがわかるだけでも、治療の選択肢は大きく広がります。 | | | | | |
気圧や天候の影響も軽視できない
日本では、気圧の変化で頭痛が悪化する天気痛に悩む人も少なくありません。雨の前日や台風が近づくと頭痛が起きるという人は、気圧の変化に敏感になっている可能性があります。天気痛は片頭痛と関連が深く、耳鼻咽喉科の領域で対応している場合もあるため、つらい症状が続くなら一度相談してみましょう。
受診の目安と行動ガイド
次のようなサインがある場合は、早めに脳神経内科や頭痛外来を受診してください。
- 市販薬が効かない、または飲む量が増えてきた
- 頭痛で予定をキャンセルすることが月に2回以上ある
- 痛み止めを月に10日以上飲んでいる
- 朝起きたときから痛い、または今までに経験したことのない痛さ
- 手足のしびれ、ろれつが回らない、意識がもうろうとする
4と5のような危険な頭痛のサインがある場合は、ためらわずに救急外来や脳神経外科を受診してください。くも膜下出血や脳腫瘍など、緊急対応が必要な病気が隠れている可能性があります。
頭痛外来の探し方
日本全国の大学病院や国立病院機構の主要病院には頭痛センターや頭痛外来が設置されています。地域の脳神経内科クリニックでも、片頭痛や緊張型頭痛の診断・治療は十分に対応可能です。
- 頭痛外来と地域名で検索して最寄りの医療機関を探す
- 日本頭痛学会の専門医が在籍する医療機関を確認する
- かかりつけ医に症状を伝え、紹介状を書いてもらう
初診では、頭痛の頻度、痛みの強さ、どんなときに悪化するかを聞かれます。事前に頭痛ダイアリーを1〜2週間つけておくと、診断がスムーズに進みます。市販薬を飲んでいる場合は、薬の種類と回数も正確に伝えましょう。
頭痛は我慢するものではない
頭痛はつらいけど我慢するしかないものではありません。市販薬に頼る生活が長引くほど薬が効きにくくなり、日常生活や仕事への影響は広がっていきます。適切な治療を受けている患者さんは、残念ながらまだ多くないのが現状です。
まずは頭痛ダイアリーをつけ始めてみてください。頭痛の日時、痛みの程度、食事や睡眠、天気をメモするだけで、自分なりの誘因が見えてきます。その記録を持って、脳神経内科や頭痛外来を一度受診してみましょう。診断がつけば、発作を抑える薬と発作そのものを減らす予防療法を組み合わせることで、多くの場合、頭痛と上手につきあえるようになります。
つらい頭痛を抱えたまま過ごす時間は、もう終わりにできます。今日の一歩が、来月の自分を変えるかもしれません。