日本頭痛学会の診療ガイドラインによると、日本人の約22%が緊張型頭痛、約8%が片頭痛を経験しています。つまり5人に1人が緊張型頭痛、12人に1人が片頭痛ということ。この二つは対処法が正反対になることがあるため、まず自分のタイプを把握することが大切です。
緊張型頭痛は、頭全体がヘルメットやハチマキで締めつけられるような痛みが特徴です。痛みは軽度から中等度で、肩こりや目の疲れを伴いやすく、午後から夕方、長時間のデスクワークの後に悪化しがちです。お風呂に入ったり軽く体を動かしたりすると楽になるのも特徴です。
一方、片頭痛は、ズキズキと脈打つような痛みが片側に現れることが多く、吐き気や光・音への過敏を伴います。日常的な動作で痛みが強くなるため、仕事や家事を中断せざるを得なくなることも。20代から40代の女性に多いのも特徴です。
見分けるポイントはシンプルです。動くと痛みが強くなるのが片頭痛、動いても変わらないかむしろ楽になるのが緊張型頭痛。そして吐き気や光過敏があるかどうか。どちらも併存している方も少なくありません。
市販薬の選び方:症状に合った鎮痛薬を賢く使う
頭痛のタイプが分かったら、次は薬選びです。日本のドラッグストアには多くの鎮痛薬が並びますが、主成分を押さえておくと迷いません。
| 主成分 | 特徴 | こんな人におすすめ | 注意点 |
|---|
| イブプロフェン | 痛み・炎症に広く効く | 比較的強い痛みがある人 | 胃腸への負担があるため空腹時は避ける |
| ロキソプロフェン | 即効性が高く痛みに強い | 急な発作を早く抑えたい人 | 胃の弱い人は注意、用法用量を守る |
| アセトアミノフェン | 胃にやさしく安全性が高い | 胃腸が弱い人、市販薬初心者 | 効き方は穏やかめ |
| 鎮痛薬+カフェイン配合 | 吸収を助け効果を持続 | なかなか痛みが引かない人 | カフェイン摂取量に注意 |
| ここで覚えておきたいのが「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」のリスクです。日本頭痛学会のガイドラインでは、単純な鎮痛薬を月に15日以上、トリプタンなどの片頭痛用薬を月に10日以上服用すると、逆に頭痛が慢性化するとされています。「痛くなる前に飲んで予防しよう」という習慣は危険です。市販薬が月に10日以上必要な状態なら、専門医の診察を受けるタイミングです。 | | | |
頭痛外来のすすめ:トリプタンからCGRP関連薬まで、進化する治療の選択肢
市販薬では対応しきれない頭痛、月に2回以上発作がある、予定を崩すほどの頭痛がある――そんな方は頭痛外来の受診を検討しましょう。脳神経内科や脳神経外科、または頭痛専門医のいるクリニックが対象です。かかりつけ医に相談して紹介してもらうこともできます。
頭痛外来で行われる治療は、大きく「急性期治療」と「予防療法」に分かれます。
急性期治療の中心は、片頭痛に特化したトリプタン製剤です。市販薬が効きにくい片頭痛発作に高い効果を発揮しますが、狭心症や脳卒中の既往がある方は使えない場合があります。2022年には新しいタイプのラスミジタンも登場し、選択肢が広がりました。
さらに注目したいのが、2025年12月に日本で発売されたナルティークOD錠(リメゲパント)です。これは日本初の経口CGRP受容体拮抗薬で、急性期治療と予防の両方に使えるのが特徴。トリプタンが使えない方や効果が不十分だった方にも新たな選択肢となっています。
予防療法としては、月1回の注射で発作頻度を大幅に減らすCGRP関連抗体薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)が2021年から使えるようになりました。発作が月に2回以上ある方、日常生活への支障が大きい方は、頭痛専門医に相談してみてください。
費用の目安:保険適用でここまでカバーできる
日本の健康保険制度では、頭痛治療の大部分が保険適用になります。3割負担の場合の目安は以下の通りです。
- 初診(診察のみ):約2,000〜3,000円
- 再診:約1,000〜1,500円
- MRI検査あり:約5,000〜1万円
- トリプタン製剤(1錠):約20〜140円
- CGRP関連抗体薬(月1回):約1万2,000〜1万3,000円
高額療養費制度を利用すれば、月の自己負担額に上限が設けられるため、継続的な治療でも安心です。費用面の不安がある場合は、医療機関の受付や相談窓口で確認してみてください。
日常生活でできるセルフケア:気圧・ストレス・睡眠の三点セット
治療と並行して、日常のセルフケアも頭痛対策の要です。
気圧対策。片頭痛を持つ方の多くが「雨の前日に頭痛がする」と話します。気圧の変化を感じたら、早めに休憩を取る、目の酷使を避けるなどの工夫を。天気予報アプリの頭痛予報をチェックするのも有効です。
ストレス対策。緊張型頭痛の多くはデスクワークによる首・肩のこりと関係しています。1時間に一度は立ち上がって肩を回す、目を遠くに向けるなど、小さな習慣が効果を発揮します。就寝前のスマホ使用を控えるだけでも、翌朝の頭痛が変わる方は少なくありません。
睡眠対策。寝不足も寝すぎも頭痛の誘因になります。特に片頭痛は、休日の寝だめで発作が起きやすいことが知られています。平日と休日の起床時間の差を1時間以内に保つことを意識してみてください。
まとめ:我慢は最大のリスク、まずはタイプ診断から
頭痛は「よくあること」と放置されがちですが、適切な治療でコントロールできる病気です。市販薬が月10日以上必要な方は薬物乱用頭痛のリスクがあり、逆に頭痛を悪化させています。危険な頭痛のサイン――突然の激しい痛み、しびれや麻痺を伴う頭痛、発熱を伴う頭痛――がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
まずはこの記事のタイプ別チェックで自分の頭痛を知ることから始めてみましょう。そして、気になる症状があれば、一度頭痛外来の扉を叩いてみてください。つらい頭痛の日々は、我慢するものではありません。