頭痛は「病気」ではなく「我慢するもの」という認識が根強いことが、受診を遠ざけている最大の理由でしょう。実際、日本頭痛学会が示すデータでも、頭痛のために日常生活に支障があるにもかかわらず医療機関にかからない人が多いと指摘されています。
もうひとつの壁は、何科に行けばいいのか分からないことです。頭痛の原因は片頭痛や緊張型頭痛といった一次性頭痛だけでなく、くも膜下出血や脳腫瘍、緑内障、副鼻腔炎などが潜む二次性頭痛の場合もあります。脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来、かかりつけ医……選択肢が多いほど、足が遠のいてしまうのも無理はありません。
さらに、仕事や家事の合間を縫って1時間以上かかる外来を受診するのは、現実的に難しいと感じる人も多いでしょう。初診は問診や神経学的診察を含めておおよそ1時間程度が目安です。時間のハードルが、治療開始までの道のりを長くしています。
頭痛外来では何が行われるのか
頭痛外来の診察は、まず問診から始まります。頭痛の部位、痛みの性質、発作の頻度、随伴症状を詳しく聞かれ、瞳孔反応や眼球運動などの神経学的診察が行われます。診断の精度を上げるため、受診前に頭痛ダイアリーをつけておくと、問診がぐっとスムーズになります。頭痛の種類や重症度を正確に判断でき、最適な治療選択につながるため、多くのクリニックが記録を推奨しています。
診断に迷う場合はCTやMRIなどの画像検査が行われます。CTは約4,000円、MRIは約7,000円が保険診療での目安です。ただし、くも膜下出血や脳腫瘍などの二次性頭痛が疑われる場合を除き、必ずしも全員に検査が必要になるわけではありません。
治療は大きく二つに分かれます。一つ目は発作が起きたときに行う急性期治療で、トリプタン製剤やNSAIDs、漢方薬などが用いられます。市販薬では購入できない処方薬が多いのが特徴です。二つ目は発作を起こりにくくする予防治療で、内服薬のほか、近年はCGRP関連抗体薬による月1回の注射療法も普及してきました。エムガルティ、アジョビ、アイモビーグといった製剤が代表的で、専門医の管理のもとで行われます。
| 治療の種類 | 主な方法 | 費用感の目安 | こんな人に向く | メリット | 注意点 |
|---|
| 急性期治療 | トリプタン製剤、NSAIDs、漢方薬 | 初診3割負担で3,000円前後 | 発作が月に数回の人 | 発作時の痛みを速やかに抑えられる | 使用頻度が高まると薬物乱用頭痛のリスク |
| 予防内服 | 抗てんかん薬、抗うつ薬、β遮断薬など | 処方薬のため薬局で自己負担分のみ | 発作が月2回以上ある人 | 発作そのものを減らせる | 効果が出るまで数週間かかる |
| CGRP注射 | エムガルティ、アジョビなど | 月1回の注射、専門医処方が必要 | 内服予防が効きにくい人 | 高い予防効果、QOL改善が期待できる | 日本頭痛学会専門医の管理が必要 |
| 非薬物療法 | 鍼灸、理学療法、認知行動療法、リラクセーション | 施術内容により異なる | 薬をなるべく使いたくない人 | 副作用の心配が少ない | 効果に個人差がある |
自分に合った受診先を見つけるコツ
頭痛外来を探すときは、「日本頭痛学会認定の頭痛専門医」が在籍しているかどうかを確認するのがひとつの目安になります。専門医は脳神経内科や脳神経外科の医師で、CGRP関連抗体薬のような最新の予防療法も適切に使いこなせます。
地域ごとの特徴もあります。東京や大阪などの都市部では頭痛専門外来を掲げるクリニックが増えており、Web問診の事前入力やオンライン診療に対応する施設も多くなっています。一方、地方では大学病院や国立病院機構の病院に頭痛センターが設置されているケースが目立ちます。大阪医療センターのように、診断から治療、手術、予防まで一貫して対応する包括的な体制を整えた施設もあります。
受診先を絞り込むときのポイントは次の通りです。
- 頭痛ダイアリーを2週間ほどつけてから受診する
- 最寄りの頭痛外来または頭痛センターを探し、専門医の有無を確認する
- 初診予約の際に、これまでの検査結果や服用中の薬があれば持参する
- 通院しやすい曜日や時間帯、オンライン診療の可否も確認しておく
生活習慣の見直しが治療の土台になる
薬物療法だけに頼るのではなく、睡眠、食事、ストレス管理も頭痛治療の重要な柱です。特に日本人に多い緊張型頭痛は、長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎによる首や肩のこりと深く関係しています。こまめな休憩やストレッチを取り入れるだけでも、症状が和らぐことがあります。
片頭痛の予防には、自分にとっての誘因を知ることが近道です。気圧の変化、睡眠不足、空腹、特定の食品、生理周期など、人によって引き金は異なります。頭痛ダイアリーを続けることで、自分の誘因パターンが見えてくるはずです。
もし今、月に数回以上の頭痛に悩まされているなら、市販薬を飲み続ける前に一度専門医の診察を受けてみてください。頭痛外来の初診は3割負担で3,000円前後が一般的です。それで「もっと早く受診すればよかった」と思える人が後を絶たないのも、頭痛外来の現場では珍しい話ではありません。痛みを我慢する日常から、一歩踏み出してみませんか。