日本では成人の約8.4%が片頭痛を経験すると報告されており、男女比はおよそ1対4。20代から40代の女性に特に多く見られます。ところが、医療機関を受診している患者さんは一部にとどまり、「忙しくて受診できない」「頭痛くらいで病院に行くのは気が引ける」という声をよく耳にします。
しかし頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛といった命に関わらない一次性頭痛と、くも膜下出血や脳腫瘍などが原因となる二次性頭痛があります。後者は早急な対応が必要です。突然の激しい頭痛、今までに経験したことのない痛み、神経症状を伴う頭痛は、迷わず救急受診してください。
毎月のように頭痛が続く場合、市販の鎮痛薬を漫然と使うより、専門医の診断を受ける方が結果的に早道です。頭痛外来では、問診と頭痛ダイアリーをもとに正確な診断を行い、あなたに合った治療方針を立ててくれます。
片頭痛と緊張型頭痛の違いを知る
頭痛のタイプによって対処法は大きく変わります。まずは自分がどのタイプかを把握しましょう。
片頭痛は、頭の片側または両側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。光・音・においに過敏になるのも特徴です。発作の前に視覚異常などの前兆が現れる方もいます。持続時間は4時間から72時間で、月に数回繰り返すケースが多いです。
緊張型頭痛は、頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。デスクワークやストレス、肩こりが原因となることが多く、吐き気はほとんど伴いません。夕方に悪化しやすいのも特徴のひとつです。
群発頭痛は、片側の目の奥がえぐられるような激痛が、数週間から数ヶ月にわたって毎日のように起こります。頻度は少ないものの、痛みが非常に強いため早めの受診が必要です。
これらを自己判断だけで見分けるのは難しいため、頭痛の頻度、痛みの性質、随伴症状をメモしておくと診察がスムーズです。日本頭痛学会が推奨する頭痛ダイアリーを活用するのもおすすめです。
頭痛外来で受けられる治療と費用の目安
頭痛外来では、まず詳しい問診と神経学的診察を行います。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査を実施し、二次性頭痛の可能性を除外します。
急性期治療の中心となるのがトリプタン製剤です。片頭痛の痛みを抑える効果が高く、発作の初期に服用するのがポイントです。血管を収縮させる作用があるため、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方には使えません。
近年注目されているのが、CGRP関連薬です。月1回の注射で片頭痛の発作そのものを予防する抗CGRP抗体薬や、2025年12月に国内で発売された経口のCGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠」があります。血管収縮作用がないため、トリプタンを使えない方にも選択肢が広がりました。
| 治療の種類 | 特徴 | 費用感の目安(3割負担) | こんな人に向く | 注意点 |
|---|
| トリプタン製剤(内服・点鼻) | 発作時の痛みを速やかに抑える | 1回あたり数百円〜千円台 | 発作が月に数回の方 | 血管系疾患の既往がある方は使用不可 |
| 抗CGRP抗体薬(注射) | 月1回の自己注射で発作を予防 | 医療機関により異なる(公的医療保険適用) | 発作が月10日以上ある方 | 効果が出るまで数ヶ月かかる場合がある |
| CGRP受容体拮抗薬(内服) | 発作時と予防の両方に使用可 | 医療機関により異なる(公的医療保険適用) | トリプタンが使えない方、服用が苦手でない方 | 副作用や併用薬の確認が必要 |
| 漢方薬 | 体質に合わせて処方 | 1回あたり数百円程度 | 痛み止めを頻回に使いたくない方 | 効果に個人差が大きい |
| 頭痛外来の初診料は、保険診療3割負担で3,000円前後が一般的です。CT検査は約4,000円、MRIは約7,000円程度が目安とされています。高額療養費制度の対象となる場合もあるため、治療が長期化する場合は医療機関の窓口で確認してみてください。 | | | | |
| なお、市販薬を3ヶ月を超えて連日のように服用すると、かえって頭痛が悪化する「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」を引き起こすことがあります。月に10日以上鎮痛薬を使っている方は、一度専門医に相談することをおすすめします。 | | | | |
日常生活でできる片頭痛対策
治療薬だけでなく、生活習慣の見直しも頭痛の予防には欠かせません。
まず睡眠のリズムを整えましょう。寝過ぎも寝不足も片頭痛の引き金になります。休日も平日と同じ時間に起床するのが理想的です。
食事面では、朝食をきちんと摂り、低血糖を避けることが大切です。空腹時間が長いと頭痛が誘発されやすいため、小まめに軽食を摂るのも効果的です。
天気や気圧の変化に敏感な方は、気圧変化を通知してくれるアプリを活用するのがおすすめです。頭痛が起きそうな日は、無理に予定を詰め込まないように調整しましょう。オフィスでの長時間のPC作業は、1時間に1回は肩や首をゆっくり動かす習慣をつけると、緊張型頭痛の予防につながります。
ストレスとの付き合い方も重要です。片頭痛は「コップの水」に例えられます。ストレスや疲労、寝不足、気圧の変化が少しずつ水をため、あふれた瞬間に発作が起きるイメージです。トリガーを減らすことと、予防薬でコップのサイズを大きくすることが対策になります。
頭痛外来を選ぶときの3つのポイント
受診を検討している方は、以下の点を確認して医療機関を選びましょう。
一つ目は、日本頭痛学会認定の頭痛専門医が在籍しているかどうかです。ホームページに医師の専門分野が掲載されています。
二つ目は、CTやMRIの検査体制が整っているか。二次性頭痛の除外診断には画像検査が欠かせません。総合病院の頭痛センターであれば、脳神経外科や眼科、耳鼻咽喉科などとの連携もスムーズです。
三つ目は、通いやすさとオンライン診療の対応状況です。再診の場合はオンライン診療に対応している医療機関も増えており、遠方でも通い続けやすくなっています。初診は問診や検査が必要なため対面診療が基本です。
頭痛と上手につきあうために
頭痛の治療は、薬を処方されて終わりではありません。頭痛ダイアリーを続けながら、発作の頻度や重症度の変化を医師と共有し、治療方針を一緒に調整していくことが大切です。
「もっと早く受診すればよかった」という声は、頭痛外来で実際によく聞かれます。頭痛による日常生活への支障が大きい方、市販薬に頼る日が多い方は、一度専門医に相談してみてはいかがでしょうか。あなたに合った治療法が見つかれば、頭痛のない日常は十分に取り戻せます。